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砕けた硝子の空の下。
浮世離れした夜の帳。
水槽の視点の向こうには、玩具箱めいた嘘吐きな世界が広がる。

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「こころ迄ヒトツになれたら」だなんて、
ちっぽけで業の深い願望で、
けれどそれは僕等の夢であり、
しかしそれが叶った瞬間、甘美な夢はガラクタになり、
忘れ難く懐かしい崩壊の産声を奏でて。
融点の箱庭は蕩けて消える飴玉のようで、
何時かの悪夢を懐古しては、また夢と飴玉の後味を求める。

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メインディッシュの罪悪にフォークを突き刺す。
向かいのテーブルからあなたがこちらを見詰める、
微笑む瞳はネオジウムのようで、
心臓のかたちをした罪悪は甘さを増していく。
平らげた後、デザートには、蜂蜜漬けの罰を頂戴。

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社会不適合の僕は
 せめて人混みに紛れ込む
擬態する様にして
非日常は日常に潜んで居る

 ほら キミの隣を見て御覧よ
 きっと 僕が居る

現実と夢の境界線があやふやなんだ
今日も胡蝶之夢 世界の行き来

 僕はどこにいるの?
リアルとバーチャルの狭間 鏡の向こう側

 深層的無意識の交差点で
 キミと出逢えたら好いな

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皮膚が邪魔で、肉が邪魔で、
キミと溶けあってイコールになりたいのに、
生命のらせんに拒絶されて、
ふたつのままで腐っていくだけ。

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泣きそうと泣きたいの交差するあたりで、
キミに若返れと無茶を言われた。
「あの頃のあなたが好きです」
そんな暴力を、今の君も好きだよって言葉で茶化して、
長い道程の先にある、
栄光でもしあわせでもない
終わりのゴールテープへ向かっていく。
手を繋いでも、いいかな。

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波打ち際に恋をされた。
節度を保って一定の時間には帰って行った波打ち際は、
いつからか常に後ろについて歩くようになった。ストーカーか。
私の足跡が、ひたひたと呑み込まれていく。
飛沫く音が、背後から迫ってくる。
ざぶん。
そうして私も呑み込んで、この惑星は一面のあおになった。

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割れた鏡の破片に映るのは
果たして同じ「わたし」なのだろうか

崩れたジグソーパズルは
完成させれば
一枚の図画に成り得るのだろうか

わたしは、崩れたジグソーパズルとして
完成されているのかも知れない
それ以上でも 以下でもない
崩れたジグソーパズル

その図画は 割れた鏡の破片の図画
映るのは 全てが違う景色で

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箱に入れたものを覚えていますか?
大切な何かを汚してしまわないよう
箱に入れて
大切にして 大切にして
大切にして 忘れてしまって
(箱を開けて)
教えて シュレーディンガー
まだ猫はにゃあと鳴く?
(箱を開けて)
教えて シュレーディンガー
大切に大切に箱へ閉じ込めるのは
本当に”大切にしている“ということ?
(箱を開けて)
教えて シュレーディンガーの猫
あの日 大切だったものは
まだ綺麗なままでいますか?
教えて シュレーディンガーの猫
あの日 大切だった気持ちは
まだ私の中で生きていますか?

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星空に砕けて散ったのは
一粒のロリポップでした
輝いたのは悠久の刹那で
辺りはあっという間に暗くなりましたとさ!

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水平線に沈んだ月の海には、塩水が満ちてほんとうの海になるのだろう
煌々とした海辺のネオンを映して
魚の鱗が輝くさまを
眩しく見る月を夢想して浴びた朝日

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熱を出した時 誰かが額に手を当ててくれた記憶がゆらめく
まるで陽炎のよう
病理的ではない熱はすぐそこまでやってきていて
見つめる鏡の自分の額へ やわり手を当てた一週間前のこと

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色変わり硝子の目は 光の質できらめきの色彩を変えるのよ
くるくる変わる目の色にくらくらするのは きっと私たち一緒でしょう
そう細める硝子細工がひび割れないよう 今は白熱灯を弱めておくんだ

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